
「実績紹介してよいと言われたけど、一応契約書にも明記したいな」
こういった悩みに答えます。
本記事の内容
- 契約書に入れる条文
- 条文の意味と使い方
- もっと細かい条文パターン
この記事を読めば、実績紹介について契約書への書き方がわかります。
契約書に入れておけば、後からトラブルの心配もなく安心してサイトに掲載できます。
本記事の信頼性
私は、会社員として総務・法務経験が15年程度あり、基本契約や業務委託契約を多数チェックしてきました。
また、他にも弁護士事務所のサイトや経産省の中小事業者向け参考サイトも閲読し、フリーランスでも使いやすいように作り直しました。
特にWebサイト制作を想定した作りになっていますが、ベースは使いまわしできると思います。
契約書に入れる条文
さっそくですが、入れる条文はこちらです。
2 第●●条の規定にかかわらず、乙は、乙のウェブサイトにおいて、乙の制作実績の紹介のために、本制作物にかかる以下の情報を公開することができる。
(1) 甲及び本制作物の名称
(2) 本制作物の画面キャプチャ
(3) 本制作物における機能・デザイン等の特徴
※甲=クライアント、乙=受注者
わりと長いですが、ほぼコピペでOKです。
とはいえ、これだけでは意味も、どこに使うかもわからないですよね。
条文の意味をわかっていれば、あるときクライアントから質問を受けたりしたとき、すんなり対応できて先方の不安を取り除くことができます。
条文を契約書のどこに使うかを知っていれば、クライアントごとに提示される契約書テンプレートのどこに入れれば自然な文書になるか、といったことも分かるようになります。
ということで、次に条文の意味と、どこに使うかについて説明していきます。
条文の意味と使い方
条文の意味について
以下の2つに分けて説明していきます。
- 2 第●●条の規定にかかわらず、乙は、乙のウェブサイトにおいて、乙の制作実績の紹介のために、本制作物にかかる以下の情報を公開することができる。
- (1) 甲及び本制作物の名称
(2) 本制作物の画面キャプチャ
(3) 本制作物における機能・デザイン等の特徴
では上から順番にいきます。
2 第●●条の規定にかかわらず、乙は、乙のウェブサイトにおいて、乙の制作実績の紹介のために、本制作物にかかる以下の情報を公開することができる。
この1文が、実績紹介をOKにするために必要な文章でして、ここさえあれば大丈夫と言っても過言ではありません。
さらに細かく見ていきます。
最初の『2』
これは契約書のどこに使うかに関係するため、少し後で説明します。
最初あたり『第●●条』
これって何?と思われますよね。
この「●●」には、契約書によく入っている、以下のような秘密保持の条文の番号を入れます。
だいたいの契約書にあると思いますので、その条文の番号を●●に持ってきましょう。
第●●条(秘密保持)
1.乙は、本契約の履行にあたり、甲が秘密である旨を明示して開示する情報及び本契約の履行により生じる情報(以下「秘密情報」という。)を秘密として取り扱い、・・・経済産業省「秘密情報の保護ハンドブック」参考資料2の第6から抜粋引用
なぜこういった言葉を入れるかというと、「このような秘密保持の義務があっても、ウェブサイトに実績紹介しますよ」という念押しのためです。
<イメージ>
Web制作業務委託契約書
第1条(目的)・・・
第2条(制作物)・・・
・
・
・
第6条(秘密保持)・・・
→この場合、実績紹介の条文は「第6条の規定にかかわらず、乙は、・・・」となります。
このような条文がないときは『第●●条の規定にかかわらず』は削除します。
じゃあ秘密保持はどうするのか、という問題が残りますが、、、
文中『ウェブサイト』について
単に『ウェブサイト』と書くだけで大丈夫です。が、営業活動でチラシにも掲載したいときなどを想定して『ウェブサイト及び出版物』といった書き方もできます。
後半『本制作物』について
契約書では冒頭や第1条あたりで、「クライアントから受託して納入するモノの呼び名」を『本制作物』とか『納入物』といった用語に統一することが多いです。
その用語と同じ言葉を使っておけばOKです。
続いて、以下の箇所についてです。
(1) 甲及び本制作物の名称
(2) 本制作物の画面キャプチャ
(3) 本制作物における機能・デザイン等の特徴
それぞれ以下のような意味となります。
(1) 甲及び本制作物の名称・・・クライアントの社名、サイト名
(2) 本制作物の画面キャプチャ・・・TOPページなどのキャプチャ
(3) 本制作物における機能・デザイン等の特徴・・・サイトの簡単な説明
シンプルな内容ではありますが、ウェブサイトの実績紹介としてはこれで事足りるかと思います。
条文をどこに使うか
次に、条文を契約書のどこに使うか=どこに入れるか、です。
契約書の最後にコピペでも、有効といえば有効です。が、、、何となく格好よくないので避けましょう。
やり方はいくつかありますが、既存の条文の後ろに追加する、というやり方が良いと思います。
ウェブサイト制作の契約には、「権利の帰属」についての条文がよくありますので、それを想定して条文を入れてみます。
第10条(権利の帰属等)
本制作物の著作権は、・・・・
これに、『2 第●●条の規定にかかわらず、乙は、・・・』を挿入します。
第10条(権利の帰属等)
本制作物の著作権は、・・・・
↑ もともとあった文章
2 第●●条の規定にかかわらず、乙は、・・・
↑ 追加した文章
このようになります。
前半で説明を後回しにしていましたが、わざわざ冒頭に『2』を入れたのは、こういった使い方をイメージしているためです。
既存の条文の後ろに追加すると、他の条文の番号に影響を与えずに済みます。
そうすると、契約書全体で引用されている条文の番号を修正せずに済むのです。
HTMLでいうなら、既存のclass名に影響を与えずに済むやり方、といった感じです。
なお、契約書作成の実務では、上記のときでも『本制作物の著作権は、・・・』の前に、『1』は入れなくて大丈夫です。
もっと細かい条文パターン
もっと細かいことを踏まえた条文パターンも用意しました。
もっと細かいパターン
第●●条の規定にかかわらず、乙は、乙のウェブサイトにおいて、乙の制作実績の紹介のために、本制作物にかかる以下の情報を公開することができる。但し、そのために第三者の許諾が必要なときは、乙の責任及び費用負担において許諾を得るものとする。また、これ以外に本制作物の公開・掲載等を行うときについては、乙は、都度甲に確認し、許諾を得るものとする。
(1) 甲及び本制作物の名称
(2) 本制作物の画面キャプチャ
(3) 本制作物における機能・デザイン等の特徴
下線のところを追加していますので、それぞれ説明します。
但し、そのために第三者の許諾が必要なときは、乙の責任及び費用負担において許諾を得るものとする。
この文章では、クライアントの許可だけでなく、さらに第三者(デザイナーとか)の許可も必要なときは受託者側で許可を取ります=クライアントには迷惑かけませんよ、ということを言っています。
クライアントの心配をできるだけ減らすための文章ですが、第三者の許可が不要とわかっているなら、この部分はなくても大丈夫です。
どんどん行きます。
また、これ以外に本制作物の公開・掲載等を行うときについては、乙は、都度甲に確認し、許諾を得るものとする。
この文章では、ウェブサイト以外でも実績紹介をしたい場合は、そのつどクライアントの許可を取ります、と明言しています。
これもまた、クライアントの心配をできるだけ減らすための文章です。ウェブサイト以外に掲載しないなら、ここもなくて大丈夫です。
まとめ
入れる条文はこちら。
2 第●●条の規定にかかわらず、乙は、乙のウェブサイトにおいて、乙の制作実績の紹介のために、本制作物にかかる以下の情報を公開することができる。
(1) 甲及び本制作物の名称
(2) 本制作物の画面キャプチャ
(3) 本制作物における機能・デザイン等の特徴
作業としては、以下のとおり。
- 秘密保持の条文の番号を●●に入れる
- 権利の帰属など既存の条文の後ろにコピペで入れる。
以上です。
おまけ
あと、フリーランス的に契約書って面倒ですよね。作成・印刷・押印・発送・返送、、、ウェブ制作より事務工数が長いのでは?という気持ちになったり。
クラウドサインは、そういった点ではかなり楽なので、おすすめです。
相手方は会員登録などしなくても大丈夫(ここ大事ですよね)。
作った契約書をテンプレ化して保存もできるので、今後使って行こうと思ってます。
ご参考まで!